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今から始めたい「目の健康づくり」

SUMMARY

  1. ・若年層に多いスマホ老眼
  2. ・白内障の検査は40代から
  3. ・目の健康に良い栄養素は

スマートフォンやタブレット端末、パソコンなど、デジタル機器の画面を凝視することが多い現代、多くの人がいわゆる「スマホ老眼」と呼ばれる目の疲れや不調に悩まされているといいます。
日々、外から多くの情報を受け取っている目に不調があると、仕事の効率が下がり、趣味も十分に楽しめないですよね。
そこで眼科医の藤本雅彦先生に、「スマホ老眼」の予防法や目の健康維持に良い生活習慣、そして、白内障など知っておくべき目の病気について、教えていただきました。

若年層に多いスマホ老眼

近年、20代から30代の若い人たちでも、手元が見にくい、夕方になると視力が落ちる、物がダブって見えるなど、まるで老眼のような症状に悩んで、眼科を受診される人が少なくありません。これは、「スマホ老眼」である可能性が高いと考えられます。

目で物を見る時には、水晶体というカメラのレンズにあたる部分の厚さを変化させることで、ピントの調整をしています。

しかし、スマートフォンなどを長時間至近距離で見続けることで、水晶体を支える毛様体筋が凝り固まってピントの調節がうまくできなくなってしまうのです。場合によっては、目の不調に加えて、肩こりや頭痛、吐き気などを伴うこともあります。

スマホ老眼の予防方法として、何より大切なのは休憩です。連続して画面を見続けるのは長くても1時間までにして、10~15分の休憩を入れましょう。できれば30分に1回の休憩を入れるのが望ましいです。
凝り固まった毛様体筋を緩めるためには、遠くの景色を見ると良いですが、わざわざ屋外に出掛けたり、窓の外を見なくても手元から部屋の壁に視点を動かすだけでも十分に効果があります。
パソコン用のメガネを使うことや、画面の輝度を落とすことも有用です。

コロナ禍でリモート会議や授業を行う機会も増えているでしょうし、ゲームや読書、映画やテレビの視聴もスマートフォンでできる時代ですから、デジタル機器を使うなとは言えません。
そこで、私が患者さんにおすすめしているのは、タブレットやパソコンをお持ちなら、そちらを使う機会を増やしてくださいということです。少しでも画面が大きい方が、目の負担は軽くなりますから。
スマートフォンの小さな画面を凝視するのが、目のためには本当によくないのです。

また、紙の本も見直してみてください。紙の本の場合はページをめくるときに視線があちこちに動きます。たったこれだけで、目は少し休まるのです。スマートフォンのアプリでは、ページを切り替えるときも小さな画面を凝視してしまいがちです。
外出先などスマートフォンしか手元にない状況ではフル活用すれば良いと思います。
ただ、ご自宅などスマートフォン以外の選択肢がある場所では、目の健康を考えて画面の大きなデバイスや紙の本を意識的に選んでください。
日々の選択の積み重ねが、スマホ老眼の予防に繋がり、目の疲れも解消されると思いますよ。

白内障の検査は40代から 

スマホ老眼以外にも、知っておいていただきたいのが「白内障」です。白内障は高齢者の病気だと思われがちですが、必ずしもそうではありません。早い方では40代から症状がみられます。また、まれではありますが、若年性白内障では30代で手術が必要になることもあります。

白内障の症状は、目のかすみ・まぶしさ・視力低下などですが、目の不調を感じたら、「疲れ目かな?」などと自己判断で放置せず、眼科を受診してください。
白内障を手術以外で完治させることは残念ながらできませんが、進行を抑制する治療法はあります。早く発見して、早く治療を始めることができれば、白内障の進行を少しでもゆっくりにできます。

白内障は加齢によって進行する病気ですが、紫外線の影響も大きいことがわかっています。肌だけでなく目に浴びる紫外線の量に気をつけてください。特に屋外で活動する時間が長い方はサングラスに加えて、つばの広い帽子を着用することをおすすめします。

また、「緑内障」という視野が欠ける病気も、40歳以上になると20人に1人が発症すると言われています。これも根治療法はないので、早く発見して、進行を遅らせる治療を早く始めることが大切です。
とはいえ、早い段階で、これらの目の病気に自分で気づくのはとても難しいという問題もあります。そこで、ぜひ行っていただきたいのが、年に1度の眼科検診です。
40歳を超えたら、症状がなくても眼科を受診してみてください。

白内障、緑内障だけでなく、視力が低下する病気はたくさんありますので、ちょっとした不調をすぐに相談できるかかりつけ眼科医がいると安心です。
将来のために、相性の良い眼科医を探すつもりで、検診に出かけてみませんか?

目の健康に良い栄養素は




生活習慣の見直し、定期的な眼科受診に加えて、日常的に取り入れていただきやすいのが日々の食事です。目に良いと言われる栄養素はいくつかありますが、眼科医としておすすめしたいのはルテイン。
ルテインは、緑黄色野菜に多く含まれるカロテノイドという栄養素の一種で、強い抗酸化作用があります。特に加齢黄斑変性という病気の予兆がある方や発症している方は、ルテインを1日に10~20mg以上摂取することが推奨されています。
私も患者さんには日頃から、ルテインを多く含むほうれん草やブロッコリー、そして芽キャベツを食べることを提案しています。野菜ジュースも悪くないのですが、栄養の吸収率を考えると、できるだけ野菜をそのまま食べるほうが良いと思います。

また、体に必要な基本的な栄養素を摂取することも、白内障の発症および進行の予防に有用だと言われています。発症してしまった白内障を改善する効果はありませんが、先に述べた通り発症予防と進行抑制がとても重要ですから、早いうちから様々な栄養素を補う習慣をつけておくと良いと思います。

私も毎朝、サプリメントを摂取していますが、健康に関心がある方はもちろん、美容に関心のある方、生活習慣や食生活が不規則な方は、まずはビタミンCを摂取してみてください。
毎日の習慣や食生活を見直して、目の健康はもちろん、心身の健康を守っていきましょう。






藤本 雅彦 先生
医療法人敬生会フジモト眼科 理事長・院長
大阪大学医学部附属病院眼科学教室入局後、大阪労災病院、大手前病院、東大阪市立総合病院眼科医長を経て、フジモト眼科副院長に就任、2015年より院長。年間1,000件前後の日帰り白内障手術を手がけるほか、抗加齢医学(アンチエイジング)専門医の資格も有する。

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