実は質が落ちている…「冬の睡眠」を見直してみませんか?
SUMMARY
- ・冬に睡眠が浅くなる大きな原因は、“寒さ”と“太陽”
- ・冬の快眠のために気をつけたい、意外な行動とは?
- ・今日から心がけたい、質のよい睡眠のため5か条
- ・まとめ
寒さと空気の乾燥が厳しい季節になってきました。日が暮れるのも早く、夜の時間が長く感じられます。その分、睡眠時間も十分にとれるような気がしてきますが、実際はその逆の傾向もあるようです。特によく聞くのが「寒くてなかなか寝つけない」「朝、ふとんから出るのがつらい」というお声。
睡眠研究家の西川ユカコさんも「冬はよい睡眠をとりづらい季節」とおっしゃっています。具体的な理由と対策法を伺いました。
冬に睡眠が浅くなる大きな原因は、“寒さ”と“太陽”
「人は眠りにつくとき、手足から熱を放出して“深部体温”を下げることによって休息モードに入ります。でも手足が冷え切っていると体は熱を奪われないように働きかけるので、体内に熱がこもったままになってしまいます。するとうまく休息モードに入ることができないので寝つきが悪くなったり、睡眠の質が下がって目覚めが悪くなることも」と西川さん。
特に冬の間は、そういう傾向にあるようです。その原因のひとつが“寒さ”だそう。
「夜に体温を下げるためには、日中にいかに体温を上げるかが鍵になります。理想は昼と夜で温度差が1度ほどあること。でも気温の低い冬は体が冷えがちで、なかなか体温を上げることができない人も。温度差が少なければ少ないほど眠りにくくなってしまうのです」
特に冷え性の人や日中の活動量が少ない人は、その傾向にあるそう。
そして日照時間の短さも睡眠の質に関係しています。
「冬の間は太陽の光を浴びる時間が短く、また太陽光の量も少なくなります。美肌のために太陽をあまり浴びないという人もいますが、睡眠には逆効果で、夜きちんと眠るためには太陽の光が不可欠。というのも私たちは光の刺激を受けると“セロトニン”というホルモンを分泌します。この“セロトニン”は、日が暮れると睡眠ホルモンと呼ばれている“メラトニン”に作り変えられ、眠気と深い睡眠をもたらすのです」
また太陽の光はメンタル面にも影響が及ぶそう。
「ネガティブな気分のときに太陽の光を浴びると気持ちがよくなるのと逆で、太陽光が足りていないとイライラしたり、鬱々とした気分になりがちに。こういった感情はストレスとなって眠りを妨げる要因につながります」
冬の快眠のために気をつけたい、意外な行動とは?
「夕食の時間と量も大切で、眠る2~3時間前には食事をすますのが理想。寝る直前まで食べていると胃腸が活発に働いてしまい、睡眠の質が下がります。また翌朝目覚めた時におなかが空いていない、朝ご飯を食べたくないという人は、夕食を食べた時間が遅いか量が多すぎる可能性が」
お酒も眠る2~3時間前までとして控えめに心がけるのがポイントだそう。
「ただ厳格すぎるのも人生がつまらなくなるので、『今日は楽しみたい』という日は夜遅くまで食事やお酒を楽しんでもいいと思います。トレードオフではないですけれど、オンオフでメリハリを大切に」
さらによかれと思っている“体の温め”グッズが睡眠を妨げていることも!
「私は、電気毛布はおすすめしません。深部体温が下がらないのと、アクリルやポリエステルなどの素材を使われているものが多いので、体が蒸れやすいんです。湯たんぽは冷えた足を温めるのに有効ですが、眠りに落ちたあとに寝返りをうちにくくしてしまいます。実はよい眠りには寝返りがとても重要で、上手にできないと血流が悪くなり、眠りが浅くなってしまうんです」
また、冷えた足を温めるための“寝ながらソックス”も逆効果だそう。
「深部体温を下げるための放熱ができなくなってしまいます。結果、眠りの質が下がってしまうのです」
そして美意識の高い方も気をつけたいのが夜の激しい運動。「ナイターのテニスやランニング、また健康のために自転車通勤をしている人など、夜のハードな運動は交感神経を優位にさせます。眠りを司る副交感神経へうまくスイッチできないのでスムーズに入眠しにくくなったり、眠りが浅くなるんです」。
夜の運動習慣を取り入れたい方は、リラックス効果をもたらすヨガやストレッチがよい睡眠にもつながるそう。
今日から心がけたい質のよい睡眠のため5か条
1.朝起きたらすぐに太陽の光を浴びる
「睡眠ホルモンの“メラトニン”は、太陽の光を浴びてから14~16時間後に分泌されます。朝に太陽を浴びることで夜に“メラトニン”が出やすい状態に」
2.日中の活動量をなるべく増やす
「寒いとどうしても家にこもりがちになります。活動量が少ないと疲労が不足し、休息が不要と体が思って充分な深い眠りを得られません。防寒対策を万全にして積極的に外に出て動くようにしましょう。太陽の光も浴びられて一石二鳥です」
3.湯船にできるだけつかる
「寝る1時間前までに、38~40度の湯船に10~15分ほどつかりましょう。体を温めておくと深部体温が下がりやすくなり、入眠しやすくなります。毎日続けることで眠りが深くなってきますよ。特に足が冷たくなりがちな人におすすめです」
4.ふとん乾燥機を活用
「眠る前にふとん乾燥機で寝具を温めておくのもよいでしょう。ただし熱々になると逆効果なので、眠る30分前にはスイッチを切っておくこと。特に冷え性の方におすすめです」
5.部屋の環境を整える
「冬の寝室の室温は20℃以上、湿度は50~60%がおすすめです。特に、室温は最低でも16℃以下にはならないように加湿器などで快適な湿度を保つことで、インフルエンザの罹患率が低くなると言われています。季節に応じて、眠りを邪魔しない範囲を意識することが大切です」
まとめ
心地よい眠りを得られると、起きた時の気分が格別に。朝ご飯もおいしくいただけて、それが体内時計のリセットにつながります。身心の健康のために、冬の睡眠をぜひ見直してみてください。
また、睡眠のサポートにはビタミンCが役立つといわれています。効率よくビタミンCを摂り続けることも意識してみてください。
西川ユカコさん
睡眠研究家、セロ活トレーナー。昭和西川代表取締役副社長兼ムアツスリープラボ所長。寝具開発、睡眠グッズ開発、睡眠にまつわる講師、睡眠イベント監修、国内外のホテル客室の睡眠環境監修、メディア寄稿、企業での講演など幅広く活躍。著書『最強の睡眠』(SBクリエイティブ)が好評発売中。